サンプル

遺言書のサンプル

 

実際に遺言書を書く場合、どういった書式になるのか、見本を掲載しています。
遺言書のサンプルについてポイントも解説していますので参考にしてください。

財産をあげたい場合

子どもがいないので妻に全財産をのこしたい場合

遺言書

遺言者 遺言太郎は、次のとおり遺言する。

一 遺言者は、次の不動産、預貯金等を含む一切の財産を、遺言者の妻 遺言花子に相続させる。
(一) 土地
所在 ◯◯県◯◯市◯丁目
地番 ◯番◯号
地目 宅地
地積 壱九弐・参五平方メートル
(二) 建物
所在 ◯◯県◯◯市◯丁目◯番◯号
家屋番号 参八番四〇弐
種類 居宅
構造 木造瓦葺弐階建
床面積 壱階八〇・七五平方メートル
弐階七五・壱六平方メートル
(三) 預金
◯◯銀行◯◯支店に対する遺言者名義の預金債権の全部
(四) その他遺言者に属する一切の財産

二 遺言執行者として◯◯◯◯(※職業、氏名、住所、生年月日を記載)を指定する。

                   令和◯◯年◯◯月◯◯日
◯◯県◯◯市◯◯丁目◯番◯号
遺言者 遺言太郎 印

※ 不動産表記は、登記簿謄本の記載をそのまま記載します。また、金額・土地の地番は変造を防ぐため、1・2・3は壱・弐・参と書きましょう。自筆証書遺言の場合には、妻に遺言の内容や検認の必要があることを話して、遺言書を妻に預けておく必要があります。手続や保管方法に不安がある方は、公正証書遺言をつくりましょう。


二世帯住宅で一緒に暮らす長男に土地をゆずりたい場合

遺言書

遺言者 遺言太郎は、次のとおり遺言する。

一 遺言者は、長男一郎が次の土地に二世帯住宅を建築し、遺言者夫婦と円満に生活してきたことを考慮して、次の土地を長男遺言一郎に相続させる。
所在 ◯◯県◯◯市◯丁目
地目 ◯番◯号
地積 壱九弐・参五平方メートル

二 遺言者は、一項以外の遺言者の全財産を全財産を長女遺言春子に相続させる。

三 遺言執行者として◯◯◯◯(※職業、氏名、住所、生年月日を記載)を指定する。

                   令和◯◯年◯◯月◯◯日
◯◯県◯◯市◯◯丁目◯番◯号
遺言者 遺言太郎 印

※同居していない子どもには遺留分がありますが、適切な遺言を作成しておくことで、その子どもが遺留分減殺請求を遠慮する場合もあります。



会社の経営を長男に引き継がせたい場合

遺言書

遺言者 遺言太郎は、遺言者と妻が創立し、発展させてきた株式会社遺言書ラボラトリーの繁栄を願い、次のとおり遺言する。

一 株式会社遺言書ラボラトリーの後継者を長男一郎に定める。

二 遺言者の所有する同社の株式を、すべて一郎に相続させる。

三 株式会社遺言書ラボラトリーが使用中の次の土地および家屋を、一郎に相続させる。
(一) 土地
所在 ◯◯県◯◯市◯丁目
地番 ◯番◯号
地目 宅地
地積 壱九弐・参五平方メートル
(二) 建物
所在 ◯◯県◯◯市◯丁目◯番◯号
家屋番号 参八番四〇弐
種類 居宅
構造 木造瓦葺弐階建
床面積 壱階八〇・七五平方メートル
弐階七五・壱六平方メートル

四 上記以外の財産は、すべて、妻花子、次男二郎、長女春子に三分の一ずつ相続させる。

                   令和◯◯年◯◯月◯◯日
◯◯県◯◯市◯◯丁目◯番◯号
遺言者 遺言太郎 印

※株式会社の場合は持ち株を、特例有限会社の場合は出資金を、長男に相続させます。個人名義の財産で、会社運営上必要なものは後継者に相続させましょう。後継者が財産の多くを取得することになる場合は、他の相続人にもできるだけ公平な相続になるよう、こころがけましょう。


会社の経営を次男に引き継がせたい場合

遺言書

遺言者 遺言太郎は、次のとおり遺言する。

一 遺言者は、遺言者が創業し、現在も代表取締役会長の地位にある、有限会社遺言書ラボの後継者として、遺言者の次男遺言二郎を指名する。遺言者は、遺言二郎が有限会社遺言書ラボを発展させるべく努力すること、長男遺言一郎及び長女遺言春子が遺言者の遺志を尊重して、社業に協力することを希望する。

二 遺言者は、遺言者が所有する有限会社遺言書ラボの全株式及び遺言者の預貯金のうち金壱千万円分を次男遺言二郎に相続させる。

三 遺言者は、二項に定める以外の遺言者の財産を、遺言者の長男遺言一郎、長女遺言春子にそれぞれ二分の一ずつ相続させる。

                   令和◯◯年◯◯月◯◯日
◯◯県◯◯市◯◯丁目◯番◯号
遺言者 遺言太郎 印

※ 株式を子ども1人だけに相続させる場合は、他の子どもの遺留分に注意する必要があります。対策としては、会社を継いだ子どもに一定の負担を課す負担付遺贈を活用するとよいでしょう。また、株式の評価によっては相続税の負担が変わってくるので事前に検討しておく必要があります。


子どもに配偶者の老後の面倒を看てほしい場合

遺言書

遺言者 遺言太郎は、次のとおり遺言する。

一 遺言者は、次の不動産、預貯金等を含む一切の財産を、遺言者の長男 遺言一郎に遺贈するものとする。
(一) 土地
所在 ◯◯県◯◯市◯丁目
地番 ◯番◯号
地目 宅地
地積 壱九弐・参五平方メートル
(二) 建物
所在 ◯◯県◯◯市◯丁目◯番◯号
家屋番号 参八番四〇弐
種類 居宅
構造 木造瓦葺弐階建
床面積 壱階八〇・七五平方メートル
弐階七五・壱六平方メートル
(三) 預金
◯◯銀行◯◯支店に対する遺言者名義の預金債権の全部
(四) その他遺言者に属する一切の財産

二 遺言者の長男遺言一郎は、上記の遺贈に対する負担として、遺言者の妻遺言花子の生存中、一ヶ月あたり五万円を毎月末日に支払い、扶養に努めなければならない。

三 遺言執行者として◯◯◯◯(※職業、氏名、住所、生年月日を記載)を指定する。

                   令和◯◯年◯◯月◯◯日
◯◯県◯◯市◯◯丁目◯番◯号
遺言者 遺言太郎 印

※ 負担付遺贈にすれば子どもは受け取った財産から母親の生活費を負担できますし、被相続人としても安心して妻の世話を任せることができます。負担付遺贈は子どもだけでなく、第三者に対しても可能です。なお、遺贈したものの子どもが義務を果たさないときは遺贈の取消しもあります。



自分の面倒を看てくれる長女に財産を多くのこしたい場合

遺言書

遺言者 遺言花子は、次のとおり遺言する。
一 遺言者は、次の不動産を、遺言者の長女 遺言春子に相続させる。
(一) 土地
所在 ◯◯県◯◯市◯丁目
地番 ◯番◯号
地目 宅 地
地積 壱九弐・参五平方メートル
(二) 建物
所在 ◯◯県◯◯市◯丁目◯番◯号
家屋番号 参八番四〇弐
種類 居宅
構造 木造瓦葺弐階建
床面積 壱階八〇・七五平方メートル
弐階七五・壱六平方メートル

二 遺言者は、遺言者の長女 遺言春子が、ほぼ毎日遺言者の自宅に通って、遺言者の食事や身の周りの世話をしてくれたこと、そのため遺言者は自宅で安心した生活ができたことに感謝して、一項記載の不動産を相続させることとした。

三 遺言者は、一項以外のすべての財産を長男一郎に相続させる。

                   令和◯◯年◯◯月◯◯日
◯◯県◯◯市◯◯丁目◯番◯号
遺言者 遺言花子 印

※看護をしたり、財産維持に特別の寄与をした者には「寄与分」が認められるが、その有無や金額で争いがある場合は家庭裁判所で審判してもらう必要があるので、長女に多くの財産をのこす具体的理由を書いておくことが重要です。


妻の連れ子に財産をのこしてやりたい場合

遺言書

遺言者 遺言太郎は、次のとおり遺言する。

一 遺言者の妻遺言花子の子相続冬子は実子ではないものの、実子にも及ばぬほどに遺言者の世話をしてくれた。
その献身的な苦労に報いるために、遺言者名義の定期預金(◯◯銀行◯◯支店、口座番号◯◯◯◯◯◯◯)を相続冬子に遺贈する。

二 上記以外の一切の財産については、妻遺言花子と長女遺言春子に、それぞれ二分の一ずつ相続させる。

                   令和◯◯年◯◯月◯◯日
◯◯県◯◯市◯◯丁目◯番◯号
遺言者 遺言太郎 印

※養子縁組をしないときは遺贈の形で財産をのこすこともできますが、相続人となったほうがもらえる財産の割合は多いので、連れ子の将来を考えて養子縁組を検討しましょう。


前妻の子の扶養を現在の妻に任せたい場合

遺言書

遺言者 遺言太郎は、次のとおり遺言する。

一 遺言者の妻遺言花子に次の財産を相続させる。ただし、前妻の子である長男遺言一男および次男遺言次男が成人に達するまで同居し、扶養する義務を負うこと。
(一) 土地
所在 ◯◯県◯◯市◯丁目
地番 ◯番◯号
地目 宅地
地積 壱九弐・参五平方メートル
(二) 建物
所在 ◯◯県◯◯市◯丁目◯番◯号
家屋番号 参八番四〇弐
種類 居宅
構造 木造瓦葺弐階建
床面積 壱階八〇・七五平方メートル
弐階七五・壱六平方メートル

二 遺言執行者として◯◯◯◯(※職業、氏名、住所、生年月日を記載)を指定する。

                   令和◯◯年◯◯月◯◯日
◯◯県◯◯市◯◯丁目◯番◯号
遺言者 遺言太郎 印

※現在の妻と前妻の子には血のつながりがないので扶養義務がありません。子どもがまだ幼い場合は負担付遺贈で前妻の子の養育を頼むとよいでしょう。また、遺贈を破棄される場合を考えて、現在の妻を前妻の子の後見人にしておくという方法もあります。


前妻の子と後妻の財産争いを防ぎたい場合

遺言書

遺言者 遺言太郎は、次のとおり遺言する。

一 前妻相続美花との間の長男遺言一男に◯◯銀行◯◯支店の遺言者名義の定期預金のすべてを相続させる。

二 妻遺言花子に次の財産の持分の参分の弐、妻花子との間の次男遺言二郎に同持分参分の壱を相続させる。
(一) 土地
所在 ◯◯県◯◯市◯丁目
地番 ◯番◯号
地目 宅地
地積 壱九弐・参五平方メートル
(二) 建物
所在 ◯◯県◯◯市◯丁目◯番◯号
家屋番号 参八番四〇弐
種類 居宅
構造 木造瓦葺弐階建
床面積 壱階八〇・七五平方メートル
弐階七五・壱六平方メートル

三 妻遺言花子にその他の財産のすべてを相続させる。

                   令和◯◯年◯◯月◯◯日
◯◯県◯◯市◯◯丁目◯番◯号
遺言者 遺言太郎 印

※後妻が入ると、前妻の子の相続分は減るので、遺言でできるだけ公平な配分をするようにしましょう。法律的には後妻と前妻の子の間に親子関係は生じないので、後妻が亡くなっても前妻の子は後妻の財産を相続することはできません。前妻の子を後妻の養子にすることも検討しましょう。

内縁の妻に財産を分け与えたい場合

遺言書

遺言者 遺言太郎は、次のとおり遺言する。

一 遺言者遺言太郎は、内縁の妻である相続春美(※住所、生年月日を記載)に遺言者の所有する一切の財産を包括して遺贈する。

二 遺言執行者として◯◯◯◯(※職業、氏名、住所、生年月日を記載)を指定する。

                   令和◯◯年◯◯月◯◯日
◯◯県◯◯市◯◯丁目◯番◯号
遺言者 遺言太郎 印

※遺言者の遺族が兄弟姉妹だけなら、全財産をあげる旨の遺言をしても遺留分を請求される心配はありませんが、親や祖父母、前妻の子どもなどの相続人がいる場合は遺留分を請求されることも考えて慎重に内容を考えましょう。


未成年の子どもに後見人を決めておきたい場合

遺言書

遺言者 遺言太郎は、次のとおり遺言する。

一 遺言者の長女遺言春子(平成◯年◯月◯日生まれ)および次女遺言夏子(令和◯年◯月◯日生まれ)に遺言者の財産のすべてを法定相続分どおりに相続させる。

二 未成年者である遺言者の長女春子および次女夏子の後見人として次の者を指定する。」
本籍◯◯県◯◯市◯◯町◯番◯号
住所◯◯県◯◯市◯◯町◯番◯号
氏名◯◯◯◯(昭和◯◯年◯月◯日生まれ)

三 長女春子および次女夏子の後見監督人として◯◯◯◯(※職業、氏名、住所、生年月日を記載)を指定する。

                   令和◯◯年◯◯月◯◯日
◯◯県◯◯市◯◯丁目◯番◯号
遺言者 遺言太郎 印

※自分が死んだら面倒を見る者がいなくなる未成年の子どもには後見人をつけましょう。それでも不安な場合はあわせて後見監督人を指定することも可能です。遺言に後見人の指定がないときは親族などの請求で家庭裁判所が後見人を指定します。


子どもを認知したい場合

遺言書

遺言者 遺言太郎は、次のとおり遺言する。

一 次の者は遺言者遺言太郎と相続春美との間の子どもであるので、これを認知する。

本籍   ◯◯県◯◯市◯◯町◯丁目◯番◯号
筆頭者  相続春美
女     相続夏美

二 遺言者が認知した相続夏美に◯◯株式会社の株式すべてを相続させる。

三 遺言執行者として◯◯◯◯(※職業、氏名、住所、生年月日を記載)を指定する。

                   令和◯◯年◯◯月◯◯日
◯◯県◯◯市◯◯丁目◯番◯号
遺言者 遺言太郎 印

※認知をすれば婚外子にも相続権が生じます。相続分は、嫡出子の二分の一です。もし認知しない場合、子どもの側から認知の訴えを起こされる可能性もあります(父親死亡後3年間は可能)。生前は認知できないが、死後なら認知してもいいという場合は遺言書で子どもを認知しましょう。


独身で子どもがいないので、甥に全財産をのこしたい場合

遺言書

遺言者 遺言花子は、次のとおり遺言する。

一 遺言者は、次の不動産を含む一切の財産を、遺言者の甥 相続三男(※職業、住所、生年月日を記載)に遺贈する。
(一) 土地
所在 ◯◯県◯◯市◯丁目
地目 ◯番◯号
地積 壱九弐・参五平方メートル
(二) 建物
所在 ◯◯県◯◯市◯丁目◯番◯号
家屋番号 参八番四〇弐
種類 居宅
構造 木造瓦葺壱階建
床面積 壱階八〇・七五平方メートル

二 相続三男は、親戚、友人に私の動産類の中から適宜の物を形見分けして欲しい。

三 相続三男は、喪主として私の葬儀一切をとり行う。

四 相続三男を登記主宰者と指定し、私の墓は、◯◯寺の遺言家の墓とし、相続三男は永代供養を行う。

                   令和◯◯年◯◯月◯◯日
◯◯県◯◯市◯◯丁目◯番◯号
遺言者 遺言花子 印

※親や祖父母が自分より先に亡くなり、兄弟姉妹も既に亡くなっている場合には、その子ども(甥姪)が相続することになります。兄弟姉妹には遺留分がないので、甥姪が数人いる場合でも遺言で一人にだけ全財産をのこすことが可能です。


独身なので老後の世話をしてくれた人に財産をあげたい場合

遺言書

遺言者 遺言太郎は、次のとおり遺言する。

一 二項に定める財産を除く私のすべての財産は、弟 遺言太助に二分の一、亡き姉 相続春子の長女である相続春美に四分の一、同春子の次女である相続夏美に四分の一ずつ相続させる。

二 私の老後の世話をしてくれた◯◯◯◯(※職業、住所、生年月日を記載)に、私の所有する◯◯株式会社の全株式を遺贈する。

三 遺言執行者として◯◯◯◯(※職業、氏名、住所、生年月日を記載)を指定する。

                   令和◯◯年◯◯月◯◯日
◯◯県◯◯市◯◯丁目◯番◯号
遺言者 遺言花子 印

※親や祖父母がいない場合、兄弟姉妹が財産を相続することになりますが、兄弟姉妹には遺留分はないので、遺言者は自由に財産をあげる人を決めることができます。


独身なので生前世話になった友人に財産を贈りたい場合

遺言書

遺言者 遺言太郎には配偶者、子、親、祖父母、兄弟など相続人となる者が一人もいない。よって遺言者の死後、すべての財産を次のように処分し、処理するように遺言する。

一 遺言者は長年の友人である◯◯◯◯の献身的な世話を深く感謝し、遺言者の所有するすべての財産を換金処分したうちの金弐百万円を◯◯県◯◯市◯◯町◯丁目◯番◯号在住の無職◯◯◯◯に遺贈する。

二 残金については、遺言者が生前お世話になった社会福祉法人◯◯会に寄付する。(※所在地等、記載)

三 遺言執行者として◯◯◯◯(※職業、氏名、住所、生年月日を記載)を指定する。

                   令和◯◯年◯◯月◯◯日
◯◯県◯◯市◯◯丁目◯番◯号
遺言者 遺言太郎 印

※相続人が誰もいない場合には、最終的に財産は国庫に帰属することになってしまいます。本人の死後、受遺者が遺言書の存在を知らないままとならないように、受遺者を遺言執行人とした公正証書遺言>基礎知識の形式で書き、正本または謄本を生前に渡しておきましょう。


財産の種類が多く、相続がもめそうな場合

遺言書

遺言者 遺言太郎は、次のとおり遺産分割の方法を指定する。

一 妻遺言花子には次の不動産を相続させる
(一) 土地
所在 ◯◯県◯◯市◯丁目
地目 ◯番◯号
地積 壱九弐・参五平方メートル
(二) 建物
所在 ◯◯県◯◯市◯丁目◯番◯号
家屋番号 参八番四〇弐
種類 居宅
構造 木造瓦葺弐階建
床面積 壱階八〇・七五平方メートル
弐階七五・壱六平方メートル

二 長男遺言一郎には◯◯株式会社の株式すべてを相続させる。

三 次男遺言二郎には◯◯銀行◯◯支店の遺言者名義の口座番号◯◯◯◯◯◯◯の定期預金すべてを相続させる。

四 長女遺言春子には、一から三までに記載した以外の財産を相続させる。

五 遺言執行者として妻遺言花子を指定する。

                   令和◯◯年◯◯月◯◯日
◯◯県◯◯市◯◯丁目◯番◯号
遺言者 遺言太郎 印

※誰がどの財産を相続するのか具体的に書き、土地・建物については地番・家屋番号を正確に記載しないと財産を特定できなくなるので注意しましょう。


たいした財産はないが、相続争いしてほしくない場合

遺言書

遺言者 遺言太郎は、次のとおり遺言する。

一 妻遺言花子には次の不動産を相続させる。
(一) 土地
所在 ◯◯県◯◯市◯丁目
地目 ◯番◯号
地積 壱九弐・参五平方メートル
(二) 建物
所在 ◯◯県◯◯市◯丁目◯番◯号
家屋番号 参八番四〇弐
種類 居宅
構造 木造瓦葺弐階建
床面積 壱階八〇・七五平方メートル
弐階七五・壱六平方メートル

二 ◯◯銀行◯◯支店の遺言者名義の口座番号◯◯◯◯◯◯◯の預金は、長男一郎、長女春子に四分の一ずつ相続させる。

三 長男一郎、長女春子は、妻花子に介護の必要が生じた場合には、協力して妻の世話をしてもらいたい。また、妻花子の生活費が不足した場合には、長男と長女が協力し話し合って、妻花子の扶養をしてもらいたい。

四 遺言者の祭祀承継者は、長男一郎を指定する。

五 遺言執行者として長女遺言春子を指定する。

                   令和◯◯年◯◯月◯◯日
◯◯県◯◯市◯◯丁目◯番◯号
遺言者 遺言太郎 印

※相続人同士で感情的な対立となり、法事もできず親戚づきあいもなくなるなど、深刻な相続争いとならないように、のこし方に配慮した遺言をつくりましょう。

家族を「争族」から守った 遺言書 30文例

財産をあげたくない場合

日頃迂遠な兄弟に相続させたくない場合

遺言書

遺言者 遺言太郎は、次のとおり遺言する。

一 遺言者遺言太郎の妻遺言花子に遺言者の全財産を相続させる。

二 遺言執行者として◯◯◯◯(※職業、氏名、住所、生年月日を記載)を指定する。

                   令和◯◯年◯◯月◯◯日
◯◯県◯◯市◯◯丁目◯番◯号
遺言者 遺言太郎 印

※兄弟姉妹にも相続権があるので財産を渡したくないときには遺言が必要ですが、兄弟姉妹には遺留分がないことから、妻に全財産を相続させる旨の遺言を書けば、兄弟姉妹が相続する財産はなくなります。


財産をあげたくない子どもがいる場合

遺言書

遺言者 遺言花子は、次のとおり遺言する。

一 遺言者は、三男遺言三郎を、長年にわたる遺言者への暴行、暴言などの虐待のために、相続人から廃除する。

二 遺言執行者として◯◯◯◯(※職業、氏名、住所、生年月日を記載)を指定する。

                   令和◯◯年◯◯月◯◯日
◯◯県◯◯市◯◯丁目◯番◯号
遺言者 遺言花子 印

※親に侮辱や虐待を加えるような子どもは、遺言で相続権を剥奪できます(廃除)。ただし、廃除が認められるのは、子どもが家に寄り付かず、借金を親に肩代わりさせたうえ、悪態をつき、何度も暴力を振るうなどの、よほどひどいケースの場合に限られます。


離婚調停中の配偶者に財産をあげたくない場合

遺言書

遺言者 遺言花子は、次のとおり遺言する。

一 遺言者遺言花子と遺言者の夫遺言太郎とは現在離婚調停中だが、遺言太郎は一年前に家庭内暴力のうえ家出をして愛人と暮らすようになり、生活費を渡さないため、調停が成立する前でも遺言者は夫である遺言太郎を廃除する。

二 遺言執行者として◯◯◯◯(※職業、氏名、住所、生年月日を記載)を指定する。

                   令和◯◯年◯◯月◯◯日
◯◯県◯◯市◯◯丁目◯番◯号
遺言者 遺言花子 印

※離婚調停中の相手に財産をあげたくない場合は生前のうちに家庭裁判所に相続人の廃除を申し立てるか、遺言書で廃除の意思表示をします。


姉と妹がいるが、姉には財産をのこしたくない場合

遺言書

遺言者 遺言夏子は、次のとおり遺言する。

一 遺言者は、次の不動産、預貯金等を含む一切の財産を、遺言者の妹遺言秋子に相続させる
(一) 土地
所在 ◯◯県◯◯市◯丁目
地目 ◯番◯号
地積 壱九弐・参五平方メートル
(二) 建物
所在 ◯◯県◯◯市◯丁目◯番◯号
家屋番号 参八番四〇弐
種類 居宅
構造 木造瓦葺弐階建
床面積 壱階八〇・七五平方メートル
弐階七五・壱六平方メートル

二 姉遺言春子は、亡父太郎のほとんどの遺産を相続し、自宅もあり不自由ない暮らしをしているので、家を持たない妹の将来を考えてこの遺言を作成した。姉にはこのことを承知してもらいたい。

三 遺言執行者として◯◯◯◯(※職業、氏名、住所、生年月日を記載)を指定する。

                   令和◯◯年◯◯月◯◯日
◯◯県◯◯市◯◯丁目◯番◯号
遺言者 遺言夏子 印

※配偶者も子どももいない場合には、ふつう法定相続人は兄弟姉妹になり、相続分は均等です。しかし、兄弟姉妹には遺留分がないので、遺言を作成すれば妹だけに財産をのこすことができます。この場合、姉と妹の間で感情的な対立が生じることも考えて、その理由を書いておきましょう。

改訂 遺言条項例 300&ケース別文例集

遺産をこんなふうに使いたい

お墓や祖先の供養が心配な場合

遺言書

遺言者 遺言太郎は、次のとおり遺言する。

一 遺言者の妻 遺言花子には次の不動産を相続させる。
(一) 土地
所在 ◯◯県◯◯市◯丁目
地番 ◯番◯号
地目 宅地
地積 壱九弐・参五平方メートル
(二) 建物
所在 ◯◯県◯◯市◯丁目◯番◯号
家屋番号 参八番四〇弐
種類 居宅
構造 木造瓦葺弐階建
床面積 壱階八〇・七五平方メートル
弐階七五・壱六平方メートル

二 遺言者は祖先の祭祀を主宰する者として長男遺言一郎を指定する。
先祖代々の墓地・仏壇など祭祀に必要とする財産は長男が取得するものとする。

三 祭祀のために必要とされる費用として、◯◯銀行◯◯支店の口座番号◯◯◯◯◯◯◯の遺言者名義の預金すべてを長男遺言一郎に相続させる。

四 遺言執行者として◯◯◯◯(※職業、氏名、住所、生年月日を記載)を指定する。

                   令和◯◯年◯◯月◯◯日
◯◯県◯◯市◯◯丁目◯番◯号
遺言者 遺言太郎 印

※祭祀財産が心配な場合には生前に祭祀主宰者を遺言で指定しておきましょう。祭祀にかかる費用についても前もって手当しておくとよいでしょう。


葬儀や法要のやり方を決めておきたい場合

遺言書

遺言者 遺言花子は葬儀や告別式などについて次のように行われることを希望する。

一 遺言者が死亡した際は、法要は檀那寺の◯◯寺の◯◯住職に連絡を取り、その指示に従うこと。◯◯住職に戒名をお願いし、戒名料◯◯万円、お経料◯◯万円を差し上げること。

二 葬儀は密葬として、必ず近親者のみで自宅で行うこと。

三 喪主は長男一郎とし、葬儀告別式は簡素に執り行い、香典は辞退してほしい。

四 受付、案内、接待等でお世話になった方々には、謝礼として金◯◯万円を差し上げるとともに、ご迷惑をおかけした町内会にも、故人の遺志として金◯◯万円の謝礼をすること。

                   令和◯◯年◯◯月◯◯日
◯◯県◯◯市◯◯丁目◯番◯号
遺言者 遺言花子 印

※遺言書は、死亡後すぐに発見してもらうことが必要ですので、身近な人に所在を知らせておきましょう。また自筆証書遺言だと検認が必要になり、すぐに開封できなくなるので財産分けの遺言書とは別に書いて、封印しておかない方がよいでしょう。


かわいがっているペットの世話を頼みたい場合

遺言書

遺言者 遺言太郎は、次のとおり遺言する。

一 遺言者遺言太郎は◯◯県◯◯市◯◯丁目◯番◯号在住の◯◯◯◯(生年月日昭和◯年◯月◯日)に◯◯銀行◯◯支店の預金から◯◯◯万円を、ただし書きの負担付で遺贈する。
ただし、受遺者◯◯◯◯は遺言者の愛犬ラボを飼育し大切に世話をすること、およびラボの死後は遺言者が生前に契約したペット霊園◯◯(※住所を記載)に埋葬すること。

二 遺言執行者として◯◯◯◯(※職業、氏名、住所、生年月日を記載)を指定する。

                   令和◯◯年◯◯月◯◯日
◯◯県◯◯市◯◯丁目◯番◯号
遺言者 遺言太郎 印

※ペットには相続権がないので、第三者に財産を贈る代わりにペットの世話をしてもらう条件をつける負担付遺贈を活用しましょう。ただし、受遺者には必ず生前に了承を得ておき、受遺者が義務を怠った場合を考えて、遺言執行者を決めておきましょう。


献体や臓器提供をしたい場合

遺言書

遺言者 遺言花子は、献体について次のとおり遺言する。

一 私は、◯◯病院で治療を受け、大変お世話になったので、医師養成のため、私の身体を◯◯病院に献体することを希望する。
長男一郎は私の意思を尊重して、献体を行ってほしい。

三 火葬後、私の骨は納骨せずに、故郷の海の沖合いに散骨してほしい。散骨の手配については、契約している◯◯株式会社(※所在地を記載)の指示に従うこと。

                   令和◯◯年◯◯月◯◯日
◯◯県◯◯市◯◯丁目◯番◯号
遺言者 遺言花子 印

※遺族がいないか遺族が拒まなければ遺族の積極的な承諾がなくても解剖を行うことができるので、遺言で献体を希望する意思を表明し、あなたの意思を家族に伝えておきましょう。また、臓器提供をする場合は、緊急を要するので、ドナーカードを利用してその意思を事前に家族に伝えることが大切です。

いかがでしょうか?
実際の遺言書のサンプルを見てみると、思ったよりシンプルでわかりやすいものだと感じます。
相続人の数が増えたり内容が複雑になりそうだという方には、公正証書遺言がおすすめです。